20年近くプライベートでお世話になっている、大型バイクのカスタムショップ「XTENSION」さん。 横浜市神奈川区の自宅兼ショップで営業されていましたが、駅開発による立ち退きを受けての移転です。 移転までの期間が短いことに加え、お店と住居の両方なので移転先の物件探しは非常に困難だったようで、見つけた物件は横浜市緑区の半地下のRC三層建。 しかも前面パイプシャッタ−BOXまでの上部に違法であろう鉄骨下地の屋根が組まれていました。 元々は原付・小型バイク専門の店舗だったみたいで、地下階(半地下)と一階(中二階)それぞれの入り口まで階段中央に幅60cm程のスロープが付いていましたが、大型バイク専門店には非常に不向きな物件でした。
当初は駅開発に携わる建築業者さんの方で改装プランと工事の計画を進めていたみたいですが「プランも費用も納得できない」との相談を受け、最初は軽くアドバイスする感覚でアイデアを提案していたのですが、最終的に「全部任せたい」という流れになりました。
まず、朽ち果てた前面パイプシャッターおよび鉄骨組の屋根は、安全性、景観性、法的にも遠慮したいので撤去し、地下階(半地下)を駐車場および倉庫、一階(中二階)をショップおよび作業場所とし、二階を住居とする計画でスタートしましたが、問題は大型バイクの搬出入です。 地下階(半地下)へのスロープは、既存の階段と同調した急勾配から、可能な限り(梁下高1.6m確保)勾配を緩やかにし、大型バイクの押し歩きも可能になるよう計画しましたが、一階(中二階)への搬出入はスロープを延長し緩やかに変更するだけのスペースがありません。 機械式バイク駐車場のリフトや貨物用のリフトも検討しましたが、設置費用も含め非常に高額なので見送ることにしました。 なにより「建築基準法施行令(昇降機関係)」により、貨物用でも四方を壁で囲わなくてはなりません。 これをショップの正面入口に設置した場合、一見ただの立体駐車場にしか見えず、ショップとしての演出が乏しくなってしまいます。
そこで、地階のドライエリアに可動範囲3.5mの作業用リフトテーブルを据置く事でショップ前面の眺望を確保し、せっかくなのでフロントサッシュも中間に方立柱の無いデザインとし、大判の透明ガラス(耐火強化ガラス)を採用することでショーウインドウとしても相応しいファサードとしました。
外部エントランスの床は、重量のある大型バイクが集まりサイドスタンド1本で駐車する場所です。 私自身、長年に渡り大型バイクを乗り回していた経験から、”滑りにくい” ”耐久性があり傷が付きにくい” ”汚れが悪目立ちしない”という条件から、最低厚30mm以上の乱形本石を選択しました。 普通の磁器タイル等の場合、端・角部分にサイドスタンドを立てると割れたりチップすることを知る、大型バイク乗りならではの材質選択です。
また、長年の汚れが蓄積したファサード外壁は、費用対効果も抜群で施工性も高い金属製サイディングを貼ることで、シンプルながら凹凸が整然と並ぶモダンでスタイリッシュな外壁に生まれ変わりました。
二階の住居部分の造作、空調設備、給排水設備、内部塗装、外部手摺など、オーナー様で手配された業者さんも含め、全体の工事費用もかなり抑えられたと思います。 その中でも、最低限の設備費用、安価で見栄えのする素材の選択、費用はかかるがこだわりたい部分、それぞれバランスよく分配できたと思います。